非同次方程式と同次方程式の違いを解説する微分方程式の基礎知識

微分方程式を学ぶ上で避けて通れない非同次方程式と同次方程式の違いについて詳しく解説します。両者の定義から解法、応用例まで幅広く網羅した内容となっています。数学を学ぶあなたは、これらの違いを正確に理解できているでしょうか?

非同次方程式と同次方程式の違い

非同次方程式と同次方程式の基本
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定義の違い

同次方程式は右辺が0、非同次方程式は右辺が0でない微分方程式です。

🧮
解の構造

非同次方程式の一般解は、対応する同次方程式の一般解と非同次方程式の特殊解の和で表されます。

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解法の違い

同次方程式は直接解けますが、非同次方程式は特殊解を見つける追加ステップが必要です。

非同次方程式と同次方程式の定義と基本概念

微分方程式を学ぶ上で、非同次方程式と同次方程式の区別は非常に重要です。これらの違いを正確に理解することで、様々な微分方程式の問題に対処できるようになります。

 

まず基本的な定義から見ていきましょう。微分に関する項を左辺に集めたとき。

  • 同次方程式(斉次方程式):右辺が0である微分方程式

    例:dydx+y=0\frac{dy}{dx} + y = 0dxdy+y=0

  • 非同次方程式(非斉次方程式):右辺が0でない微分方程式
    例:dydx+y=5\frac{dy}{dx} + y = 5dxdy+y=5

注意すべき点として、「同次形の同次」と「同次方程式の同次」は全く関係ないので混同しないようにしましょう。そのため、混乱を避けるために「斉次方程式」と呼ぶ場合もあります。

微分方程式の形式を見るときは、必ず微分に関する項を左辺に集めることが重要です。例えば、dxdt=x\frac{dx}{dt} = xdtdx=x という式は一見非同次に見えますが、dxdtx=0\frac{dx}{dt} - x = 0dtdx−x=0 と変形すると同次方程式であることがわかります。

非同次方程式の解構造と同次方程式の関係性


非同次方程式と同次方程式の間には、重要な関係性があります。非同次線形微分方程式の一般解は、対応する同次方程式の一般解と非同次方程式の特殊解の和で表すことができます。

例えば、非同次方程式 d2ydx2+P(x)dydx+Q(x)y=R(x)\frac{d^2y}{dx^2} + P(x)\frac{dy}{dx} + Q(x)y = R(x)dx2d2y+P(x)dxdy+Q(x)y=R(x) の一般解は以下のように表されます。
y=yc+ypy = y_c + y_py=yc+yp
ここで。

  • ycy_cyc は対応する同次方程式 d2ydx2+P(x)dydx+Q(x)y=0\frac{d^2y}{dx^2} + P(x)\frac{dy}{dx} + Q(x)y = 0dx2d2y+P(x)dxdy+Q(x)y=0 の一般解
  • ypy_pyp は元の非同次方程式の特殊解(任意の一つの解)

この関係性は数学的に証明できます。非同次方程式の特殊解 ypy_pyp が見つかったと仮定し、y=yc+ypy = y_c + y_py=yc+yp を元の非同次方程式に代入すると。
d2(yc+yp)dx2+P(x)d(yc+yp)dx+Q(x)(yc+yp)=R(x)\frac{d^2(y_c + y_p)}{dx^2} + P(x)\frac{d(y_c + y_p)}{dx} + Q(x)(y_c + y_p) = R(x)dx2d2(yc+yp)+P(x)dxd(yc+yp)+Q(x)(yc+yp)=R(x)
これを展開すると。
(d2ycdx2+P(x)dycdx+Q(x)yc)+(d2ypdx2+P(x)dypdx+Q(x)yp)=R(x)\left(\frac{d^2y_c}{dx^2} + P(x)\frac{dy_c}{dx} + Q(x)y_c\right) + \left(\frac{d^2y_p}{dx^2} + P(x)\frac{dy_p}{dx} + Q(x)y_p\right) = R(x)(dx2d2yc+P(x)dxdyc+Q(x)yc)+(dx2d2yp+P(x)dxdyp+Q(x)yp)=R(x)
ここで、ycy_cyc は同次方程式の解なので、括弧内の第一項は0になります。また、ypy_pyp は非同次方程式の特殊解なので、括弧内の第二項は R(x)R(x)R(x) に等しくなります。よって。
0+R(x)=R(x)0 + R(x) = R(x)0+R(x)=R(x)
これは恒等式となり、y=yc+ypy = y_c + y_py=yc+yp が非同次方程式の解であることが証明されます。

非同次方程式と同次方程式の解法の違いと具体例


同次方程式と非同次方程式では解法に違いがあります。ここでは具体例を通して解法の違いを見ていきましょう。

1階線形微分方程式の場合:
同次方程式 dydx+y=0\frac{dy}{dx} + y = 0dxdy+y=0 の一般解は y=Cexy = Ce^{-x}y=Ce−x となります(Cは任意定数)。

一方、非同次方程式 dydx+y=5\frac{dy}{dx} + y = 5dxdy+y=5 を解くには。

  1. 対応する同次方程式の一般解 yc=Cexy_c = Ce^{-x}yc=Ce−x を求める
  2. 非同次方程式の特殊解を求める(この場合、yp=5y_p = 5yp=5 が特殊解となる)
  3. 両者を足し合わせて y=Cex+5y = Ce^{-x} + 5y=Ce−x+5 が非同次方程式の一般解となる

2階線形微分方程式の場合:
同次方程式 y+y=0y'' + y = 0y′′+y=0 の一般解は y=C1cosx+C2sinxy = C_1\cos x + C_2\sin xy=C1cosx+C2sinx となります。

非同次方程式 y+y=xy'' + y = xy′′+y=x の解法。

  1. 同次方程式の一般解 yc=C1cosx+C2sinxy_c = C_1\cos x + C_2\sin xyc=C1cosx+C2sinx を求める
  2. 非同次方程式の特殊解を求める(この場合、yp=xy_p = xyp=x が特殊解となる)
  3. 両者を足し合わせて y=C1cosx+C2sinx+xy = C_1\cos x + C_2\sin x + xy=C1cosx+C2sinx+x が非同次方程式の一般解となる

特殊解を見つけるための方法としては、未定係数法や定数変化法などがあります。未定係数法は右辺が多項式、指数関数、三角関数などの場合に有効で、定数変化法はより一般的な方法です。

非同次方程式の特殊解を求める方法と未定係数法


非同次方程式を解く上で最も重要なステップの一つが特殊解を見つけることです。特殊解を求めるための代表的な方法として「未定係数法」があります。

未定係数法は、右辺 R(x)R(x)R(x) の形に基づいて特殊解の形を仮定し、その係数を決定する方法です。以下のような場合に特に有効です。

  1. 右辺が多項式の場合 R(x)=anxn+an1xn1+...+a1x+a0R(x) = a_nx^n + a_{n-1}x^{n-1} + ... + a_1x + a_0R(x)=anxn+an−1xn−1+...+a1x+a0

    • 特殊解の形: yp=Axn+Bxn1+...+Mx+Ny_p = Ax^n + Bx^{n-1} + ... + Mx + Nyp=Axn+Bxn−1+...+Mx+N

  2. 右辺が指数関数の場合 R(x)=aebxR(x) = ae^{bx}R(x)=aebx

    • 特殊解の形: yp=Aebxy_p = Ae^{bx}yp=Aebx

  3. 右辺が三角関数の場合 R(x)=asin(bx)+ccos(bx)R(x) = a\sin(bx) + c\cos(bx)R(x)=asin(bx)+ccos(bx)

    • 特殊解の形: yp=Asin(bx)+Bcos(bx)y_p = A\sin(bx) + B\cos(bx)yp=Asin(bx)+Bcos(bx)


ただし、特殊解の形が同次方程式の解と重なる場合は、特殊解に xkx^kxk を掛ける必要があります。ここで kkk は重複度(同次方程式の解と特殊解の形が重なる度合い)です。

例えば、非同次方程式 y+4y=e2xy'' + 4y = e^{2x}y′′+4y=e2x を考えます。対応する同次方程式 y+4y=0y'' + 4y = 0y′′+4y=0 の一般解は yc=C1cos(2x)+C2sin(2x)y_c = C_1\cos(2x) + C_2\sin(2x)yc=C1cos(2x)+C2sin(2x) です。右辺が e2xe^{2x}e2x なので、特殊解として yp=Ae2xy_p = Ae^{2x}yp=Ae2x を仮定します。これを元の方程式に代入して。
(4A)e2x+4(Ae2x)=e2x(4A)e^{2x} + 4(Ae^{2x}) = e^{2x}(4A)e2x+4(Ae2x)=e2x
8Ae2x=e2x8Ae^{2x} = e^{2x}8Ae2x=e2x
よって A=18A = \frac{1}{8}A=81 となり、特殊解は yp=18e2xy_p = \frac{1}{8}e^{2x}yp=81e2x です。したがって、非同次方程式の一般解は。
y=C1cos(2x)+C2sin(2x)+18e2xy = C_1\cos(2x) + C_2\sin(2x) + \frac{1}{8}e^{2x}y=C1cos(2x)+C2sin(2x)+81e2x
となります。

非同次方程式と同次方程式の物理学的応用と実世界での意味


微分方程式は物理学や工学など多くの分野で応用されています。同次方程式と非同次方程式の違いは、物理現象を理解する上でも重要な意味を持ちます。

物理学的な解釈:

  • 同次方程式:外部からの力や入力がない自然な系の振る舞いを表します。例えば、摩擦のある環境での自由振動する振り子の運動は同次方程式で表されます。

    md2xdt2+cdxdt+kx=0m\frac{d^2x}{dt^2} + c\frac{dx}{dt} + kx = 0mdt2d2x+cdtdx+kx=0
    この場合、振り子は時間とともに静止状態に向かいます。

  • 非同次方程式:外部からの力や入力がある系の振る舞いを表します。例えば、強制振動する振り子の運動は非同次方程式で表されます。

    md2xdt2+cdxdt+kx=F0cos(ωt)m\frac{d^2x}{dt^2} + c\frac{dx}{dt} + kx = F_0\cos(\omega t)mdt2d2x+cdtdx+kx=F0cos(ωt)
    この場合、振り子は外部からの周期的な力の影響を受けて振動します。


実世界での応用例:

  1. 電気回路:RLC回路において、電源がない場合(同次)と電源がある場合(非同次)で方程式が変わります。


    • 同次:Ld2qdt2+Rdqdt+1Cq=0L\frac{d^2q}{dt^2} + R\frac{dq}{dt} + \frac{1}{C}q = 0Ldt2d2q+Rdtdq+C1q=0
    • 非同次:Ld2qdt2+Rdqdt+1Cq=V0sin(ωt)L\frac{d^2q}{dt^2} + R\frac{dq}{dt} + \frac{1}{C}q = V_0\sin(\omega t)Ldt2d2q+Rdtdq+C1q=V0sin(ωt)

  2. 構造工学:建物や橋の振動解析では、風や地震などの外力がない場合(同次)と外力がある場合(非同次)で方程式が変わります。

  3. 制御工学:フィードバック制御システムでは、入力信号がない場合(同次)と入力信号がある場合(非同次)で方程式が変わります。


非同次方程式の解は、同次方程式の解(自然応答)と特殊解(強制応答)の和として表されます。これは物理的には、系の自然な振る舞いと外部からの影響の組み合わせを表しています。

例えば、バネ-質量系において、同次方程式の解は初期条件によって決まる自由振動を表し、非同次方程式の特殊解は外力による強制振動を表します。時間が経過すると自由振動は減衰し、最終的には強制振動だけが残ります。

このように、非同次方程式と同次方程式の違いを理解することは、物理現象の本質を理解する上でも非常に重要です。

日本機械学会論文集での微分方程式の物理応用に関する詳細な解説

以上の内容から、非同次方程式と同次方程式の違いは単なる数学的な区別ではなく、物理現象の本質的な違いを表していることがわかります。両者の関係性を理解することで、より複雑な問題にも対応できる力が身につくでしょう。